2つの「マネー小説」に学ぶ、本当に大事なお金の話 原田ひ香×田内学「お金の本当の役割とは」対談
原田:田内さんにぜひ伺いたことがあります。ありがたいことに『三千円の使いかた』をたくさんの人に読んでもらって、学校の先生からインタビューを受けたり、生徒さんの前でお話ししたりする機会が増えました。
お金の専門家ではないなりにお応えしてきたつもりなんですけど、ある学校のインタビューで、最後の最後に「お金って大切なの? と子どもに聞かれたら、どう答えるんですか?」と質問されたんですね。ちょっと否定的なニュアンスもあったものだから、つい「大切に決まってるじゃないですか!」と食い気味に答えてしまったんです。
もっとちゃんと考えて丁寧に答えるべきところ、そこで時間切れになってしまったのが心残りで……。田内さんも、あちこち講演などに呼ばれていると思いますけど、どんなことをお話しされていますか?
きれいごとでなく、最後は「愛」である
田内:1つ記憶に残っているのは、「お金、仲間、愛、どれが一番大事?」という話をしたことですね。
中学校と高校で同じ話をしたんですけど、どちらとも最初に、この問いを生徒たちに投げかけてみたんです。そうしたら中学生は「お金」が4割、「仲間」が4割、「愛」が2割。高校生は「お金」が5割、「仲間」が3割、「愛」が2割でした。
原田:おもしろいですね。そこからどう話を展開されたのか、気になります。
田内:基本的には『きみのお金は誰のため』に書いたことと同じなんですど……、
――という社会の構造の話をしました。
だから、知らない人に助けてもらうためには「お金が大切」。原田さんのおっしゃったことはその通りなんです。
だけど、それは家族や仲間での助け合いを補うもの。お金ばかりを追い求めて、家族や仲間を失う人の話をよく聞きますが、それでは本末転倒だと僕は思います。
経済というと「お金のためのお金の話」になりがちですが、経済とは、もともと人と人との助け合いが根っこにあるもの。本当は「人のためのお金の話」をしなくちゃいけないんです。
原田:知らない人に助けてもらう、そのための道具がお金なんですね。『きみのお金は誰のため』も、お金の話なんだけど、終盤では愛の物語になっていって、なんだかすごくホッとしました。
田内:この本の主人公が住んでいる地域では、住んでいる人たちの交流や支え合いが成立しています。できるだけ商店街で買って、時には少しまけてもらったりと損得勘定だけじゃない関係性がある。
それが都会では、損得勘定ばかりの人間関係になりがちです。すると相手の立場で考えることもできなくなっていく。そのなかでも唯一、相手を思って行動することができるのは、「愛」を感じる相手がいるときです。そんな思いも込めて、最後は「愛」なんだ、という物語にしました。
後編の対談記事はこちらから(後編は婦人公論.jpに掲載)
【後編】お金の意味とは?マネー小説のベストセラー作家2人が語る「いくらお金を積んでも、やってくれる人がいなかったら叶わない」
(構成:福島結実子)
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