(2)上のような複雑な想定をするのでなく、MMTは、「統合政府の政府部門」が発行する国債をそのまま「統合政府の中央銀行部門」が購入するケースを考えているであろう。そのとき、民間銀行の貸し出しに「原資」は必要ないのと同じく、中央銀行部門がすべて貸すので政府にも原資=「財源」は必要ない、という論理かと思われる。
このように中央銀行が完全に政府に従属するならば、政府債務がいくら累積していても、借り換えすればよく、最終的にはいくらでも貨幣を発行して返済できる。したがって財政の破綻はなく、問題もないという主張になる。この限りではたしかに不可能ではない。
インフレが債務膨張にブレーキをかける?
しかし問題は、原理的に制限なく国債を「発行することができるか」ではなく、債務累積がどの程度であっても、国債と貨幣の増発を続けて「経済全体のバランスが保たれるか、持続可能かどうか」にある。
問題をはっきりさせるため、国債の発行が続いて、政府債務残高がGDPのたとえば10倍に達した状態を考えよう。これまでの国債累増のペースを延長すると2100年にはGDPの10倍になるとのシミュレーションがあり(もちろんいくつかの仮定を置いてだが)、空想ではない。
MMTからは、そこまでに至る前にインフレが生じて国債増加はストップされるはずだ、という反論があるだろう。しかし、一定の条件のもとでは、累積は続きうる。これほどの国債増加を30年も続けてインフレが起きなかった日本が「好例」である。インフレが起きずに国債累積が続くことはありうるのである。
このとき、どんな問題が起こるだろうか。
第1はインフレである。
いま想定しているケースにおいては、現在の日本のように、大量の国債を中央銀行が買い入れ、代金としてベースマネーも巨額になっているが、市中銀行がそれを貸し出しに回さずに、準備預金として中央銀行口座に滞留させている(だからインフレになっていない)状態が考えられる。
それが何らかの理由で貸し出しに回り、流通貨幣が急増すると、大規模なインフレとなりうる。波乱を生じずに、大量の準備預金が持続したり、静かに正常水準へ戻ったりするという想定のほうが、むしろ想定が困難だ。
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