「年収900万円→工場夜勤バイト」57歳男性の綻び それでも高級分譲マンションに住み続けるワケ

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ただ入院中は大きな転機もあった。くも膜下出血が原因の高次脳機能障害という診断を受けたのだ。高次脳機能障害とは、脳卒中や交通事故などにより脳が傷ついたことによって生じる認知機能障害のこと。新しいことが覚えられない、集中できない、計画通りに行動できない、怒りっぽくなるといったさまざまな症状がある。

残ったのは障害者手帳と借金だけ

イサオさんにとっては思い当たることばかり。皮肉なことに強制入院の結果、10年近くさいなまれてきた「以前の自分ではなくなった」という不安の正体が明らかになった。これにより毎月約6万円の障害年金を受け取れるようにもなったという。

一方で入院期間は2カ月に及んだ。自宅に帰ると、すでに妻と子どもたちの姿はなく、荷物も運びだされた後だった。ほどなくして妻から離婚調停を申し立てられたが、イサオさんはこれを拒否。子どもたちはすでに成人しており、イサオさんは婚姻分担費用として毎月1万5000円を払い続けているという。

イサオさんは自嘲気味に「残ったのは障害者手帳と借金だけです」と言った。

 最近読み始めたという、脳卒中の後遺症と向き合う人たちの実話を基に描いた小説「片翼チャンピオン」。イサオさんが今回取材を受けた理由も「同じような境遇で生きている人に自分のことを知ってほしいと思ったから」だという(編集部撮影)

自動車部品メーカーを辞めてからの就職活動は難航している。複数の会社に勤めたものの、いずれも短期間で退社。今は生活とローンの支払いのため携帯のバイトアプリを使い、夜間のパン工場など毎月20日前後の夜勤仕事を掛け持ちしている。収入自体は悪くないが、連日の夜勤による体への負担は小さくない。工場側の都合次第では月20日間働ける保証はないし、いつ雇い止めにされるかもわからない。この間も風俗店やラブホテルの夜間のフロント業務に応募したが、採用には至らなかった。

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