ビッグサンダーマウンテンで尿路結石が通る理由 イグノーベル賞を受賞したおもしろすぎる研究

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また、論文では、「理想的なのは、速く、荒く、ある程度ひねりや回転があるが、逆さまになったりしないものだ」とコメントしている。スペースマウンテンやロックンローラーコースターなど、ディズニーワールドで比較的「こわい」とされるジェットコースターにも乗って試してみたが、効果は見られなかったからだ。

ビッグサンダーマウンテンはライドのテーマからもガタガタ動くように設計されており、乗客は横に細かい振動で揺さぶられる。一方、スペースマウンテンなどは速度が速過ぎて、加減速のたびにかかる重力により、反対に石が固定されてしまうと、ワーティンガー医師は推測している。時速65キロメートル以上であれば良いが、時速160キロメートルでは速過ぎるらしい。

6ミリメートル以下の石なら試す価値あり

医師たちは、一度石が通った後も定期的にジェットコースターに乗ることで、大きな石の発生の予防にもつながるだろう、と結論付けた。ジェットコースターに乗ることで直径6ミリメートル以上の石が通る確率は1%程度なので、6ミリメートル以下の石なら試す価値あり、とのことだ。

カルシウムや尿酸が尿路に蓄積してできる結石。原因は不明な場合が多いが、動物性タンパク質の過剰摂取はリスクを上げるとされている。日本人では男性で7人に1人、女性で15人に1人が一生のうちに一度は尿路結石ができるとされている。

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すぐに生死に関わる病気ではないが、石が尿管に移動するととても痛いらしい。小さい石は自然に通るのを待つことが多いが、石をとるために手術が必要な時もある。

また、手術とまではいかなくとも、衝撃波を使って大きな石を砕く方法もある。この場合は石の残骸が腎臓に残り、結局また石を形成してしまう可能性があるそうだ。

ということで、石が大きくなる前に行ってみましょうか、遊園地。

ワーティンガー医師のコメント
「これが業界一般の認識とは言えませんが、私たちはこの研究を始めてから患者さんたちに勧めており、なかなか成果があるように思えます」

五十嵐 杏南 サイエンスライター

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いからし あんな / Anna Ikarashi

1991 年愛知県生まれ。カナダのトロント大学で進化生態学・心理学を専攻(学士)。休学中に半年間在籍した沖縄科学技術大学院大学で執筆活動をはじめる。同大学卒業後、イギリスのインペリアルカレッジロンドンに進学。科学の専門家と非専門家をつなぐことを目的とした学問「サイエンスコミュニケーション」の修士号を取得。同カレッジ在学中に、NHK CosmomediaEurope やBBC でリサーチャーを務める。日本帰国後は京都大学の広報官を務め、2016年11 月からフリーに。2019 年9 月、一般社団法人知識流動システム研究所フェロー就任。

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