フランス、いじめ厳罰化「加害者を転校させる」背景 今年9月に施行、2022年にはいじめを犯罪化

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現在、フランスでは学校でのいじめの定義は、1人以上の生徒がクラスメート(あるいは学校内外の生徒)1人に対して行う反復的な身体的暴力、言葉や心理的な暴力とされ、「いじめ行為は犯罪」として認識されている。

2022年3月の法改正で、嫌がらせを受けた被害者が自殺または自殺未遂をした場合、最高で懲役10年、罰金15万ユーロ(約2370万円)が科される。さらに8日間以下の完全な就学不能を引き起こした場合、3年以下の懲役および4万5000ユーロの罰金が科され、8日間を超えて完全に就学不能となった場合は、5年以下の懲役および7万5000ユーロの罰金が科される。

過去には学校内で起きたことは学校側、保護者、本人の問題として扱われ、加害者も未成年者であるために犯罪として罪を問うことは正しくないと認識する傾向もあった。だが、ネットいじめがエスカレートして自殺者を出す事態に発展したことで、政府は重い腰を上げた。

さまざまないじめ対策を拡充

フランスでは、いじめ対策(ハラスメントおよびサイバーハランスメント防止)のプログラム(pHARe)も初等・中等教育・高等教育に拡大させている。そのプログラムでは、生徒を保護する専門家とスタッフのコミュニティーを形成し、いじめの状況に効果的に介入し、保護者や学校、教育支援団体、健康や市民権を守る教育環境委員会を動員し、対策実施の進捗状況を監視するとしている。

いじめ専用の情報共有プラットフォームも提供。教育実習生の体系的な研修を皮切りに、すべての教職員が教育現場でのいじめと闘う訓練を受けることが義務づけられ、研修内容も専門機関で構築する。

いじめ防止措置は3段階に分類され、第1レベルは教育チームと生徒、保護者の話し合いによる和解解決で懲戒処分はない。

第2レベルは和解の試みにもかかわらず、いじめが継続され、国の教育機関の教育心理学者や医療関係者が介入し、解決に取り組む段階を差す。

第3レベルは継続的いじめによって被害者生徒の安全に重大な脅威を与えている場合、強制転校も可能としている。第3レベルは昨年3月にいじめが犯罪と定められ、対策強化が検討された結果として、強制転校権が今年9月に校長に与えられた形だ。

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