なぜ今この問題が浮上したのか。
冒頭に挙げた議員たちの発言でしきりに引用されていたのが、野村総合研究所が取りまとめたデータだ。“突破給付”というアイデアも実は、昨年10月に野村総研が公表した提言そのままである。
「理想論を待っていたら時間がかかってしまう。あくまで一時的な手だ」。担当した野村総研の武田佳奈エキスパート研究員は、制度そのものを見直す必要を認めつつ訴える。
提言のきっかけは、コロナ禍から経済活動が再開した昨年春、人手不足が顕在化したことだった。「労働力不足が経済成長の足かせになっている。損しないなら働けるという人がいる」。
「新たな壁」と狭まる3号領域
折しも2022年10月1日には関連する制度改定が行われた。厚生年金の適用拡大だ。健康保険と併せて加入を義務づける労働時間の下限を週20時間に引き下げるもので、501人以上の企業に加え、2022年10月に101〜500人の企業が対象となった。
対策の主眼は、短時間労働の非正規雇用労働者を、雇用されて働く人向けの社会保険の傘に包摂すること。非正規の多くが国民年金に加入し、自ら保険料を全額負担しながら保障が薄いことは大きな課題だった。
一方、パート主婦にとっては、20時間以上働いて国民年金3号のままとなる上限が月約10.8万円(年130万円)から8.8万円(年106万円)に下がる。これが「新たな壁」といわれるもので、厚生年金に加入するか、労働時間を減らす就業調整を行って加入を避けるかの選択となる。
適用拡大と併せて、最低賃金の引き上げが進んでいることも大きい。政府はメドとして年3%を示す。2022年10月の改定で、約30円上がった。とくに地方ではパート賃金が最低賃金に連動する。3号の収入上限ギリギリで働くパート主婦が3号にとどまろうとすれば、労働時間を減らすことになる。
適用拡大と最賃引き上げ。いずれも働く環境を改善するための制度改定だが、それにより、パート主婦が3号のままでいられる労働時間の範囲は狭まっている。
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