香港政府は映画開発基金に2億4000万香港ドルを確保することを発表し、今後、ストリーミングプラットフォーム向けのコンテンツ開発にも力を入れるなど、映像分野の流通市場を拡大させていく計画があることも明かしています。
香港版おっさんずラブ主演俳優の人気
香港政府の方針を裏付けるように、ローカル系ストリーミングプラットフォームもまた香港エンタメを活気づけています。香港最大手の通信系PCCWグループ傘下のストリーミングプラットフォームViuTVがその担い手となり、地元香港のみならず、東南アジアで勢力を伸ばしていることが注目されています。
香港フィルマートでViuTVが報告した数字によれば、香港および東南アジア地域全体で月間アクティブユーザー数は6600万人に上り、市場シェアトップに位置づけています。また有料会員数ではNetflixを抜いて、Disney+に次ぐ2位と、大健闘しています。
香港および東南アジアで最も人気を誇るのが韓国ドラマであることから、ViuTVはオリジナル制作の韓国ドラマにも力を入れています。「シグナル」などを代表作に持つ韓国俳優イ・ジェフンを起用したドラマ「タクシー・ドライバー」など、新規加入を牽引する強力コンテンツを持っていることがViuTVの存在感を高めているのです。
もちろん韓国に頼りっきりというわけでもありません。香港独自のエンタメ力を活かして、オーディション番組から12人のボーイズグループ「MIRROR(ミラー)」を生み出し、香港を中心に幅広い年齢層の女性から支持を集めています。歌と踊りとビジュアルで勝負する韓国と比べると、少々その辺りは見劣りはしますが、MIRRORの攻め所は演技力です。この辺りが香港らしさを醸し出しています。
彼らの演技力が認められた作品というのが実は、香港版「おっさんずラブ」なのです。田中圭演じた春田役をメンバーのイードン・ルイが、林遣都演じた牧役を同じくメンバーのアンソン・ローが演じ、確かな演技力を証明しています。
さらに世界三大映画祭の1つにあるベルリン国際映画祭で今年、特別上映された中国のソイ・チェン監督作品「Mad Fate」ではメンバーのロックマン・ヨンが準主役に起用されています。メンバー全員が出演する初作品「WE 12」の製作も控え、メンバー結成から5年目を迎えてノリに乗っているという具合です。
この5年の香港といえば、コロナの前には2019年から2020年にかけて大規模な民主化デモもありました。香港を去る人も多く、変化に慣れている香港人といえども、どこかで心に穴が空いたような感覚が少なからずあったのかもしれません。それを埋めるようにMIRRORというボーイズグループの人気が確立したともいえ、そしてここにきて香港が生んだミシェル・ヨーのニュースも加わり、香港復活の道筋は作られ始めているように思えてきます。
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