狭軌・標準軌直通、スイスフリーゲージ列車の実力 観光路線で実用化、日本と仕組みはどう違う?

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ゴールデンパスエクスプレス
モントルー行きの「ゴールデンパスエクスプレス」。軌間可変装置を搭載し、狭軌と標準軌の路線を直通できる(撮影:橋爪智之)
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2022年12月11日の冬ダイヤ改正から、スイスのモントルー・オーベルラン・ベルノワ鉄道(MOB)に新たな列車「ゴールデンパスエクスプレス」が走り始めた。

ダイヤ改正から新しい列車が走り始めるのはよくあることだが、このゴールデンパスエクスプレスは単なる新車ではない。日本でも西九州新幹線(九州新幹線長崎ルート)の新幹線・在来線直通用として注目を集めていた、軌間可変装置を搭載する「フリーゲージトレイン」で、線路幅の異なる他社路線への直通運転を開始したのだ。

乗り換え必須だった観光ルート

MOBはレマン湖畔のリゾート地モントルーとツヴァイジンメン間を結ぶ風光明媚な路線で、「氷河急行」などと並んでスイスでも人気の高い観光路線だが、狭軌(線路幅1m)路線のためスイス連邦鉄道をはじめとする標準軌(1435mm)路線との直通運転ができなかった。

同鉄道はツヴァイジンメンからインターラーケンまでのベルン・レッチュベルク・シンプロン鉄道(BLS)と、インターラーケンからルツェルンまでのツェントラル鉄道(ZB/旧スイス連邦鉄道ブリューニッヒ線)と手を組み、3つの路線を総合して「ゴールデンパス・ルート」という名称で売り込んでいる。だが、MOBとZBが狭軌なのに対して中間のBLSは標準軌のため、3路線の直通列車を運行することはできず、必ずツヴァイジンメンとインターラーケンで乗り換えが必要となっていた。

インターラーケンは有名なユングフラウ登頂の玄関口として多くの観光客が訪れる街であり、乗客の大半はここで途中下車するため、乗り換えが生じることに大きな問題はなかった。しかし、ツヴァイジンメンはお世辞にも観光要素があるとは言いがたい小さな村で、そこを目的地とする人はほとんどいない。

次ページ直通へ「3線軌条」も検討したが…
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