そうした中、日銀は16年9月に「総括的な検証」を発表する。そこでは、日銀がレジーム転換によって期待に働きかけてインフレ率予想を引き上げる動きは弱く、長期デフレを経験した日本では「現状が続く」との適合的な予想形成の影響が強いと結論づけた。「期待」の効果を絶対視した黒田日銀が、目算が外れたことを認めた瞬間であった。
総括的な検証では同時に「金融環境改善の結果、物価の持続的な下落という意味でのデフレではなくなった」とも明言した。実際、翌17年度には名目GDP(国内総生産)成長率は2%、インフレ率は0.7%を記録。有効求人倍率に至っては17年4月に1.48倍とバブル期の水準を超え、あちらこちらで人手不足が叫ばれる完全雇用状態になった。
その一方で、16年1月に導入したマイナス金利政策が効きすぎて長期金利まで全面的にマイナス圏へ沈み込み、機関投資家や金融機関の反発、経営不安は高まった。
つまり、当時の状況を総合すれば、「黒田日銀の当初の戦略こそ失敗したものの、経済自体は完全雇用で好調、一方で金利は異常なほど低い」というものだった。
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