有料会員登録 東洋経済オンラインとは
ライフ #厳選ノンフィクション

『仁義なき戦い 菅原文太伝』 日本映画界のスター その魅力の源泉に迫る

4分で読める 会員登録で読める
仁義なき戦い 菅原文太伝(松田美智子 著/新潮社/1870円/304ページ)書影をクリックするとAmazonのサイトにジャンプします。
[Profile] まつだ・みちこ 山口県生まれ。金子信雄主宰の劇団で松田優作と出会い結婚。1子をもうけて離婚。その後、シナリオライター、ノンフィクション作家、小説家として活躍。『天国のスープ』『女子高校生誘拐飼育事件』『福田和子はなぜ男を魅了するのか』など著書多数。

不器用で一本気。昭和の日本映画界を支えた俳優、菅原文太の印象を聞かれたらこう答える人は多いのではないか。

1973年、菅原が39歳のときに1作目が公開された代表作『仁義なき戦い』シリーズでのアウトローでありながらも筋を通すヤクザ役や、広島弁で語りかけるCMでの頑固親父の印象が強い。

本書は菅原の生前の発言、俳優仲間や関係者の証言を積み上げ、「人間・菅原文太」を浮かび上がらせた労作だ。

菅原は90年代に「理想の父親」のアンケートで1位になるなど、世代を超えて親しまれた。だが、同じくヤクザ映画のスターだった高倉健に比べると菅原に焦点を当てた書籍は少ない。それは、菅原のつかみどころのなさが関係しているのかもしれない。

新東宝でデビューし二枚目スターとして売り出されたものの、会社の経営不振もあり、人気はいま一つ。新東宝が倒産した後に移籍した松竹でも、役に恵まれず不遇をかこつ。役者として注目を集めるようになったのは68年に東映に移ってからだ。

昔の銀幕のスターは私生活でもスターらしかったとはよく聞くが、菅原はスターになってもスター然としなかった。

例えば、『仁義』の撮影で京都から広島に向かう新幹線の車中で、車掌に対して怒鳴り散らしたことがあったという。駅のホームで立ち食いうどんを買って、そのうどんを食堂車に持ち込んで食べようとしたら、注意されたのが原因だ。菅原は「外から持ち込んだものを食堂車で食べてはいけないルールを誰が決めたのか」と譲らなかった。その場に居合わせた梅宮辰夫は後年、著者の取材に「立ち食いのうどんなんだから、店で食えばいいのにね。言い出したらきかない。頑固でねえ」と答えているが、もっともだ。

こちらの記事もおすすめ

あなたにおすすめ

ライフ

人気記事 HOT

※過去1ヶ月以内に配信した記事の閲覧数