[Profile] Tom Voss 2003年から3年間、米陸軍で現役勤務。陸軍初のストライカー歩兵旅団の1つに所属。
Rebecca Anne Nguyen トムの姉。ノースカロライナ州シャーロットを拠点として活動する作家。
帰還兵、復員軍人の精神面の問題は古くて新しいテーマだ。戦中、戦後は日本でも問題視されたし、現代ではイラクに派遣された自衛官の中にもPTSD(心的外傷後ストレス障害)を発症し苦しんでいる人たちがいる。
9.11米国同時多発テロ事件以降、10年以上にわたりアフガニスタン、イラクとの非対称戦争を行ってきた米国には、かなりの数の帰還兵、復員軍人が存在する。そして彼らの多くがPTSDなどの精神疾患を抱えているのだ。
米国では戦争従軍者の精神面のケア不足が社会問題となっている。この問題に関する書籍としては『帰還兵はなぜ自殺するのか』という名著が日本語に翻訳されている。
本書も彼ら帰還兵の問題を扱ったものだ。ただ、復員軍人当人の著作である点が前述の本との違いだろう。
著者トム・ヴォスは代々奉仕家の家系に生まれた。父母も祖父母も社会貢献を旨とした。トムは、陸軍に入隊し国に貢献することが、それに続く道だと思ったという。
入隊後の新兵訓練では、徹底して「個」を消し去り、集団を優先するよう教え込まれた。つねに「われわれ」を主語に思考し、部隊を最優先するよう教育されるのだ。この経験が帰還兵を呪縛することになると、トムは考察している。
その後トムは、イラク戦争で活躍した多機能部隊、ストライカー旅団を構成する第21歩兵連隊第3大隊に歩兵として所属。激戦地のモスルに派遣され、辛(つら)い経験を重ねる。
例えば、部隊に向かってくるダンプカーを止めるため、トムは交戦規定に則(のっと)り3度の威嚇射撃の後、運転手を射殺した。だが、車からは武器も爆弾も見つからなかった。
運転手は民間人で威嚇射撃に気づかなかっただけなのではないか? 本当に殺すべき相手だったのか?
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