[Profile] Elizabeth Rush ノンフィクション作家・写真家。米リード大学で英文学士号、サザンニューハンプシャー大学で美術学修士号を取得。現在はブラウン大学英文学部客員講師。「ニューヨーク・タイムズ」、「アル・ジャジーラ」などに寄稿。
長靴の形をしているのはイタリアだけではない。米国のルイジアナ州もそうである。だが、現在のルイジアナ州の「靴底」はボロボロに破れ擦り切れている。靴底にあたる地域にはかつて広大な湿地帯があったが、海に変わってしまったのだ。
同州では1932年から2000年までの間に約4920平方キロメートルが失われたという(これは福岡県の面積約4987平方キロメートルに匹敵する)。ここは地球上で最も急速に浸食が進む地域の1つである。
ダム開発による河口の堆積物の減少、石油掘削による地盤沈下、気候変動による海面上昇など、原因は複合的で1つに絞ることはできない。だが確かなこともある。失われたものはもう二度と元には戻らないということだ。
「彼の背後には四・五メートルほどの高さのイエス・キリスト像が立っている。殉教者のやせ細った体は傾き、その腕は水の広がりに向かって伸びていた。キリスト像の隣には、枯れたサイプレスの木がそびえていた。空洞になったその枝は、この男の犠牲的な身ぶりに酷似している。この枯れ枝もまた、自己をむき出しにして、死へと至ったのだ。その根は塩に浸かっていた」
沈みゆくジャン・チャールズ島(ルイジアナ州)の描写は、まるで終末の光景のようだ。
ルイジアナ州以外にも、巨大ハリケーンに襲われたスタテンアイランド(ニューヨーク州)、絶え間なく洪水に襲われるペンサコーラ(フロリダ州)などを著者は訪ね歩いた。そして、脆弱な土地で暮らす人々の話に耳を傾ける。
住民の多くは貧しい生活を送っているが、水辺の土地でしか見ることのできない美しい景色を愛していた。だがその美しい景色は今や様変わりしてしまっている。
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