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『偉い人ほどすぐ逃げる』 責任を取らない「偉い人」 日本社会「劣化」の本質

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  • 堀内 勉 多摩大学社会的投資研究所教授・副所長、HONZ
偉い人ほどすぐ逃げる(武田砂鉄 著/文芸春秋/1760円/264ページ)書影をクリックするとAmazonのサイトにジャンプします。
[Profile] たけだ・さてつ 1982年生まれ。東京都出身。出版社勤務を経て、2014年からフリーライター。多くの連載を持つほか、ラジオパーソナリティーとしても活躍。『紋切型社会──言葉で固まる現代を解きほぐす』で第25回Bunkamuraドゥマゴ文学賞受賞。著書多数。

『偉い人ほどすぐ逃げる』という、身も蓋もないタイトルだ。その「はじめに」には、日本の現状が次のように書かれている。

「いつも同じことが起きている。偉い人が、疑われているか、釈明しているか、逆にあなたたちはどうなんですかと反撃しているか、隠していたものが遂にバレたか、それはもう終わったことですからと開き直っているか、だ。/国家を揺るがす問題であっても、また別の問題が浮上してくれば、その前の問題がそのまま放置され、忘れ去られるようになった。」

この文章を読んで思い浮かぶのが、「本末転倒」という言葉だ。日本が劣化しているといわれて久しいが、今の日本が抱える問題のかなりの部分を、この言葉で言い表せるのではないだろうか。

「目的の実現のために手段がある」、要は「目的→手段」という本来あるべき順番が転倒し、「手段→目的」の形になってしまうのだ。すなわち、「本来の目的が見失われ、手段を正当化するために目的が捏造される」ということだ。

これを「形骸化」という言葉に置き換えてもいい。だが、日本の現状が深刻なのは、目的と手段の逆転現象が、「本来の目的」を破壊し始めているためではないだろうか。

本書で取り上げられるのは、例えば、当初は東日本大震災からの「復興五輪」を掛け声に動いていた東京2020オリンピックだ。これがいつの間にか「新型コロナウイルスに打ち勝った証」に変質してしまっている。日本のワクチン接種率が先進国中最下位であるにもかかわらずだ。

また、丸川珠代五輪担当相は、「絆を取り戻す」ことを東京五輪の目的に掲げている。だが、今やその五輪が社会の絆を引き裂いているのではないだろうか。東京五輪という巨大スポーツイベントが、社会問題から一般大衆の注意を逸(そ)らすための手段として使われているようにも思える。

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