同盟修復など伝統への回帰を進めるバイデン大統領の外交政策。だが、米政界では長年維持されてきた台湾政策の変更を求める議論が熱を帯びている。中心にあるのは、中国の侵攻を未然に防ぐには台湾を軍事的に支える意思をもっと鮮明に打ち出す必要がある、という問題意識だ。
1979年に中華人民共和国を中国における唯一の合法政府と正式に認めた後も、米国は巧みな政策で台湾と緊密な経済関係を築き、中国を牽制してきた。それでも、台湾有事の際の具体的な介入方針を米政府が明示したことは一度もない。このような「戦略的曖昧さ」で両立を狙ったのは、中国による侵略行動の抑止と台湾で高まる独立心の抑制だ。しかし中国が経済力を強め、挑発行動を繰り返すようになったことから、軌道修正を求める声が強まっている。
国務省幹部だった米外交問題評議会のハース会長は、米国の戦略的曖昧さは限界に達しており、台湾の自衛にもっと明確に関与すべきだと主張する。米海軍士官が今年発表した論考にも、戦略的曖昧さでは「激しさを増す中国の対台湾活動をもはや抑止できない」と記された。米インド太平洋軍のデービッドソン司令官(当時)は3月の議会公聴会で今後6年以内に中国が台湾に侵攻する可能性に言及、戦略の再考を歓迎すると述べた。ゲーツ元国防長官も戦略的曖昧さの有効性に公然と疑問を呈している。米上院では台湾の防衛力強化に向けた法案が提出された。
とはいえ、戦略的曖昧さの妥当性は失われていないと考える政策担当者は今も少なくない。バイデン政権でアジア政策を統括するキャンベル・インド太平洋調整官は同路線を「平和と安定の維持に向けた最善の道」と呼んだ。政権内で浮上しているのは、台湾の保護に曖昧さを残すことで中国との緊張過熱を避けつつ、パワーバランスの変化に合わせて軍事的抑止力を引き上げる路線だ。つまり、戦略的曖昧さからの決別とは違う。
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