バイデン政権は3月31日、2兆ドルを超えるインフラ投資計画を発表した。電力網の刷新や電気自動車向け充電ステーションの拡充、対中国を意識したサプライチェーン(供給網)の強化などに加え、敷設済みの高速道路を取り壊すという異色の提案も盛り込まれた。背景には、高速道路の整備が人種間の格差を助長した米国の歴史への反省がある。
米国の高速道路には、人種差別の時代の遺産としての性格がある。例えば都市部での高速道路の建設では、黒人などの貧しいコミュニティーが狙い撃ちにされた。オバマ政権で運輸長官を務めたフォックス氏によれば、1950~60年代に高速道路の建設で立ち退きを迫られた世帯のうち、4分の3が黒人を中心とした貧困層だった。
高速道路の完成により、白人を中心とした中間層は、郊外の庭付き住宅から車で通勤する生活を手に入れた。しかし、その裏側では、建設地となった都市部の黒人やヒスパニックのコミュニティーが、多大な犠牲を強いられていた。立ち退きを免れた場合ですら、建設地周辺のコミュニティーは、成長の機会を奪われた。高速道路の完成により、コミュニティーからの人や車の往来は難しくなり、経済活動が妨げられた。
ルイジアナ州ニューオーリンズでは、米国でも有数の歴史を持つ黒人コミュニティーが高速道路で切り裂かれ、カリフォルニア州オークランドでも黒人コミュニティーを商業地から切り離す壁のように高速道路が建設された。フォックス氏が育ったノースカロライナ州シャーロットの黒人コミュニティーも、三方を高速道路で囲まれ、ピザの宅配すら断られたという。
バイデン政権のブティジェッジ運輸長官は、「われわれの高速道路には、人種差別が組み込まれている」と指摘する。都市計画の名の下に進められた黒人などの立ち退きは、都市から貧困地域を一掃する手段として意図的に進められていたからだ。ニューヨーク市の周辺では、黒人が市の中心部へ通勤しにくくなるように、バスが通過できない高さに高速道路をわざと敷設した例すら伝えられる。
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