3月20日号の本欄でも述べたように、コロナショックが日本の経済社会に及ぼした影響の中で注目されたのが、東京都の人口が流出超過に転じたことである。東京の人口は長い間、流入超過だったが、2020年5月に流出超過となり、その後21年2月まで続いた(20年6月を除く)。
かねて東京一極集中の是正こそが地方創生のカギだと考えていた人々は、これがそのきっかけになるのではないかと大いに喜んだ。感染症リスクの高まりやテレワークの普及により、東京から地方へという構造変化が生じると期待したからである。菅義偉首相は今年1月の施政方針演説で「23年間、東京都へは人の転入が超過していましたが、昨年の夏以降は、5カ月連続で流出が続いています。そうした機会をとらえ(中略)都会から地方への大きな人の流れを生み出してまいります」と述べている。
人は、起こってほしいと思うことは起こると予想しがちである。これは行動経済学で「非現実的な楽観主義」と呼ばれるバイアスだ。私は、コロナ危機をきっかけに一極集中是正が進むと考えた人々は、データを十分吟味することなく、願望をそのまま展望に置き換えてしまったのではないかと考えている。それは次のような点である。
1つは、東京圏ではなく東京のデータだけを見ていたことだ。確かに東京の人口は、20年5月〜21年2月の累計で約2.5万人の流出超過となったが、東京圏(東京、埼玉、千葉、神奈川)では同期間に約4000人の流入超過だった。
多くの場合、東京から周辺県への移動にとどまり、東京圏外への人口流出はほとんど起きていない。勤務先は同じまま、都心の狭い住宅から周辺県のやや広めの住宅に移った結果と考えられる。
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