10月初めに発表された9月の米国雇用統計では、非農業部門の雇用者数が事前予想の前月比86万人増に対して66万人の増加にとどまり、景気回復の鈍化を示すものといわれた。日本でも日銀短観の業況判断DIが大企業製造業でマイナス27とやはり事前予想のマイナス24を下回り、同様のことが指摘された。実際、日米とも夏場の新型コロナウイルス感染者数の再増加によって景気回復の足取りが影響を受けた可能性は高い。そして、エコノミストやメディアも判で押したように、「コロナ後の景気回復は緩やか」という説明を繰り返している。
しかし、米国の雇用者数の動きを過去の景気後退局面と比較してみると、例えば2008年秋のリーマン危機に伴う景気後退局面では、底打ちした10年以降の増加ペースはほぼ一貫して月約16万人であった。景気回復の初期段階においてさえ、多い月で30万人台、少ない月では10万人以下の増加であった。その意味では、今回の月66万人という増加数は極めて大きい数値といえ、リーマン危機時の約4倍という「急速」なペースで回復が進んでいることになる。
もちろん、今後もこの増加ペースが続くという保証はない。とはいえ、一般的にいわれている「今回の景気回復は緩やか」という表現は、現実の数値とはかなりのギャップがあることも確かである。コロナ危機後の景気回復は、本当のところは「緩やか」なのだろうか。それとも「急速」なのだろうか。
人々が弱気なのでは
景気は、「角度」で見るか「水準」で見るかによって大きな違いがある。上述の例でいえば、雇用者の増加数は「角度」であり、雇用者数それ自体が「水準」を表す。現在、「角度」は急だが「水準」がまだ低いので、実感として景気回復が「緩やか」に感じられているという可能性もある。そこで、景気全体の水準を示す代表的な指標である鉱工業生産を見てみよう。
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