少し前のことになるが、経済同友会の櫻田謙悟代表幹事の発言が“炎上”したことを覚えておられるだろうか。新型コロナウイルス感染症対策の国民1人当たり10万円給付案に対して、同氏は「電子マネーでの給付が望ましい」と述べたのだ。
氏の発言に対する批判は、大きく2つに分けられる。1つ目は感染拡大防止のために営業自粛を後押しする目的を景気対策と取り違えているというもの。2つ目は電子マネーという手段に対するものだ。ここでは後者、電子マネーの是非について取り上げたい。
昨年、キャッシュレス推進政策が採られた。背景にあったのは、キャッシュレス化の遅れが日本経済停滞の理由の1つなので、それを推し進めることは正義であるとする考え方だ。櫻田氏の発言もこの文脈に沿っている。
しかし、この考えは正しいのか。ドイツのネット決済比率は日本より低い。モバイルバンキングの利用率を見ても、カナダやフランスは日本と同様に低水準だ。
さらに、IT先進国といわれる米国では、キャッシュレス礼賛に対する揺り戻しの動きが出ている。
今年1月、ニューヨーク市議会は「キャッシュレス禁止法」を可決した。これはキャッシュレス決済の禁止ではなく、小売店やレストランに対し、消費者による現金支払いを拒否することを禁じる法律だ。違反には罰金1000ドルが科せられる。同市の市民のうち11%は銀行口座を持っておらず、また、口座があっても残高が十分でなく、カードを利用できない低所得者も少なくないからだ。
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