[Profile] にのみや・あつと/1985年東京都生まれ。一橋大学卒。フィクション、ノンフィクションの別なく、ユニークな着眼と発想、周到な取材に支えられた作品で人気を博す。『最後の秘境 東京藝大 天才たちのカオスな日常』『最後の医者は桜を見上げて君を想う』など著書多数。
競技ダンスの世界にまったく興味はなかったが、それでも本書を読んでみようと思ったのは、この著者の作品であったことが大きい。
著者の二宮敦人氏は『最後の秘境 東京藝大』や『世にも美しき数学者たちの日常』など、身近にある知られざる世界を紹介することに長けた作家である。
本作は著者の自伝的ドキュメントノベルという形式をとっているが、これはプライバシーへの配慮によるものであり、全体のストーリー、軸となる本人の体験談、競技ダンスにかかわる記述を含め、れっきとしたノンフィクションであるとのこと。大学時代に競技ダンス部に所属していた自身の実体験に基づき、ディープな世界の奥深くまで紹介している。
何といっても、競技ダンス特有のルールの数々が目を引く。まず、なぜかはわからないが、髪をジェルでカチンカチンに固めなくてはならない。これは規約にも明記されているくらいの必須事項だ。
また、これもなぜかは知らないが、運動するにもかかわらず正装しなければならないし、顔面を歌舞伎役者のようにド派手に化粧する。ラテン系の種目に出る場合は肌を黒くする必要もあるという。
そしてこれだけルール尽くしの競技ダンスだが、肝心の採点には明確な決まりがない。どれだけ視線を奪えるか、そしてどれだけ感動させられるかという主観のみによってすべてが決まるのだ。
と、ここまで来て競技ダンスにまったく興味が持てなかった方もご安心いただきたい。本書には、もう1つ見どころがある。それは、青春という眩(まぶ)しい単語に包まれたモヤモヤ感を探っていくプロセスだ。学生当時の話、そしてかつての仲間を訪ねながらたどり直した今の話。2つの時間軸を照らし合わせながら、その正体を描き出していく。
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