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『下級国民A』 格差社会が生み落とすもの、美しい国の不都合な真実

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下級国民A(赤松利市 著/CCCメディアハウス/1500円+税/234ページ)書影をクリックするとAmazonのサイトにジャンプします。
[Profile] あかまつ・りいち 1956年、香川県出身。関西大学卒業。『藻屑蟹』で第1回大藪春彦新人賞を受賞。「住所不定無職の新人」として話題となる。著書に『鯖』『犬』『ボダ子』『純子』『らんちう』など。2020年、『犬』で第22回大藪春彦賞受賞。

本書は62歳で「住所不定無職」の新人作家として鮮烈なデビューを果たした作家、赤松利市が経験した、東日本大震災の復興事業に関するルポルタージュだ。

著者、赤松は35歳で起業し、一時は年収2000万円を超えていた。しかし、ある事情により会社は倒産。以後、厳しい生活を強いられる。

そんな折、東日本大震災が発生。土建業を営む知人の社長から相談を受ける。震災後の復興バブルに乗るべく専務である息子を東北に派遣するので、「営業部長」となって同行してほしい、儲けが出れば半分は赤松の取り分にするという内容だ。土木業は未経験だが、儲けを出せば利益の半分を手にできる。人生逆転のチャンスだ。そう思い仕事を引き受ける。

だが、そのもくろみはすぐに崩れさる。復興バブルに便乗するべく東北に集った零細企業たちが、大手ゼネコンのように現場全体を請け負うことは不可能だ。零細企業は、大手が請け負った現場に作業員を派遣する、人工(にんく)出しと呼ばれる形態での参入になる。派遣した作業員の頭数で儲けが決まる。専務は「部長さんにも作業員してもらいまっせ」と言い出す。抗議もむなしく、赤松は一作業員として派遣されることになる。

同僚となる作業員は非正規の日雇い労働者たちだ。彼らは一様に幼稚で劣等感が強い。そして、幼児性の裏返しか、理解できないくらい怒りの沸点が低く、すぐにキレる。

彼らの習性に辟易しながらも、赤松は、彼らだけが悪いのかと自問する。貧困家庭出身者が大多数で、満足な教育も受けていない者たち。彼らは社会のひずみが生み出した存在でもある。

働き方改革、生涯現役、人生百年時代という掛け声の下で非正規労働者の数は増え続けている。広がり続ける貧富の格差の中で、池袋で母子を轢殺(れきさつ)した「上級国民」は逮捕されない不条理がまかり通る。これが日本の現状だ。上級国民があるなら「下級国民」も存在する。そして今は自分も「下級国民」だ。

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