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『DOPESICK アメリカを蝕むオピオイド危機』 鎮痛薬が人々の命を奪う、恐るべき薬物汚染の実態

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DOPESICK アメリカを蝕むオピオイド危機(ベス・メイシー 著/神保哲生 訳・解説/光文社/2200円+税/484ページ)書影をクリックするとAmazonのサイトにジャンプします。
[Profile] Beth Macy ジャーナリスト。米バージニア州に拠点を置き30年にわたり取材活動をしている。著書に『Factory Man』『Truevine』など。ハーバード大学のジャーナリストのための特別研究員「ニーマン・フェローシップ」など12を超える全米での賞を受賞。

2019年4月、プロゴルファーのタイガー・ウッズがマスターズ・トーナメントで5度目の優勝を飾った。この優勝は、オピオイド(鎮痛薬)依存を克服しての勝利だったため「奇跡の復活」と称賛された。長く腰痛に悩まされ、鎮痛薬が手放せなくなっていたウッズは、17年に「薬物影響下での自動車運転」の容疑で逮捕されている。逮捕時の虚(うつ)ろな目をした写真を覚えている人も多いだろう。

「たかが鎮痛薬」と侮ってはいけない。オピオイドは極めて依存性が高く、ミュージシャンのプリンスや俳優のフィリップ・シーモア・ホフマンなど、過剰摂取が原因で亡くなった著名人も多い。全米ですでに40万人が命を落とし、400万人もが依存症に苦しんでいるといわれる。しかもこの空前の薬物汚染は、医師の処方した薬をきっかけに引き起こされたのだ。

本書は、オピオイド禍の震源となったバージニア州西部のアパラチア地方で何が起きていたのかを、地元紙の記者だった著者が克明につづったドキュメントである。アメリカ社会をむしばむ恐るべき薬物汚染の実態を伝える一冊だ。

これまで新種のドラッグといえば大都市から地方へと広がるのが常だった。だがオピオイドの流行は逆のルートをたどった。まずアパラチアの小さな村から始まり、中西部のラストベルトへと広がっていった。かつては石炭業や鉄鋼業が栄え、白人のブルーカラーが多く暮らす地域である。

オピオイド汚染の主役は「オキシコンチン」という錠剤だ。パデュー・フレデリックという製薬会社が開発し、1995年にFDA(米食品医薬品局)に認可された。既存の鎮痛薬の3倍長く効果が持続するのが売り文句だったが、徐放作用のために施されたコーティングを取り除き、むき出しになった薬効成分だけを利用すれば、ヘロインに似た強烈な陶酔感が得られた。

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