なぜ中国で始まった新型コロナウイルスの感染拡大が欧州で猛威を振るい、イタリアで最も多くの犠牲者を生んでいるのか。その具体的な経緯は医療関係者が今後明らかにしていくだろう。
だが、背景にグローバリゼーションがあることを多くの人が実感している。新型コロナウイルスは中長期的に見て、米国のトランプ大統領の対中貿易戦争よりも効果的に反グローバリゼーションの動きをもたらすのではないか。
EU(欧州連合)は全体として中国とのビジネス上の結び付きが強く、人の往来も盛んで、とくにイタリアには中国系住民が多かった。また、グローバリゼーションを人、物・サービス、資本の地球規模での展開と定義するなら、EUの単一市場はグローバリゼーションの実験場のようだ。域内はシェンゲン協定によって国境検査なしに人が移動できるが、これが感染拡大の一因となった可能性は高い。
EUは物流だけは何とか維持しようとしているものの、人の流れは分断を余儀なくされた。イタリアのコンテ首相は医師や看護師の不足や疲弊を訴えて域内諸国に支援を要請したが、自国の防衛に手いっぱいで、医療物資すら囲い込む始末だ。イタリアに医療物資の支援を申し出たのは中国とロシアでその思惑も気になる。
EUへの怒りの爆発も
ECB(欧州中央銀行)のラガルド新総裁は、7500億ユーロの資産買い入れ枠を設定するなど大型の対策を急きょまとめた。リーマンショック後に南欧諸国の財政が悪化して国債の金利が急騰した欧州債務危機(2010〜12年)の再燃を阻止することが念頭にある。だが、金融政策の効果は限られる。
一方、EUとして経済の底割れを防ぐための財政支援の話は遅々として進まない。EU財政規律の順守に厳しいドイツなど欧州北部の国々も、今回はさすがに各国が一時的に規律を緩めることには合意した。しかし、EU共同財源の活用やEU共同債の発行についてようやく俎上に乗せるものの、消極的な声も多い。統合通貨ユーロは競争力の強いドイツに有利に働くのに、その利益を調整する財政統合はこれまでもなかなか実現できなかった。
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