トランプ米大統領が米連邦準備制度理事会(FRB)の理事候補に自陣営の経済顧問だったジュディ・シェルトン氏を指名し、中央銀行の独立性に対する懸念が改めて深まっている。シェルトン氏はFRBの独立性に懐疑的で、「議会や大統領とのさらなる協調」をFRBに求めてきた。FRBがトランプ氏との「協調」となれば、トランプ氏が金融政策を仕切るのは目に見えている。シェルトン氏は2022年に任期を終えるパウエル現議長の後任含みとされる。これでは猛獣に鶏小屋のカギを渡すようなものではないか──。そう警戒する声が上がるのも、うなずける話だ。
中央銀行の独立性が脅かされているのは米国だけではない。トルコでは政府の意向に逆らったとして昨年、中央銀行総裁が更迭された。インドでも中央銀行総裁が政府からの介入にさらされ、「個人的な理由」で辞任する事件が18年にあった。その数カ月前には、別の副総裁がモディ政権を次のようにこき下ろしていた。「中央銀行の独立性を尊重しない政府は早晩、金融市場の怒りを買う」。
中央銀行は時流の変化に恐れをなしている。各国の中央銀行を束ねる国際決済銀行(BIS)は「リーマンショック以降、中央銀行は尋常ならざる重荷を背負わされてきた」とし、人々は中央銀行にないものねだりしているとクギを刺した。米運用大手ピムコのフェルズ氏も「独立した中央銀行の時代は過ぎ去った」と結論づける。
だが中央銀行は本当に、その権限を利己的な政治家に明け渡すことになるのだろうか。そうは思わない。ある研究によれば、中央銀行を再び政府に従属させる法改正が行われた例は今のところない。
あれだけ派手に息巻いているトランプ氏や英国のジョンソン首相ですら、中央銀行のトップには手堅く、実務家を据えた。ドラギ氏からラガルド氏に交代したECBの総裁人事も偏ったものではなかったし、そもそもECBの独立性を弱めようとすれば、EU基本条約を改正しなければならなくなる。加盟国によっては国民投票が必要になるため、そんなリスクを背負い込んでまで、わざわざECBの独立性をいじろうとする指導者はいないだろう。しかも、ECBに対する政治的な圧力は下がっている。10年前の欧州債務危機でECBの威信は激しく傷ついたものの、ここ何年かで権威の回復は進んだ。債務危機が直撃したギリシャにおいてすら、ECBは今、政府以上に信頼されているのだ。
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