「葬式が減って、一人でも多くの身内が学校を卒業する。そんな日が来るのを祈っているよ」。サンゴンサロ出身のブラジル人、ドウグラスさんの言葉が私の耳に銃声のようにこだました。ドウグラスさんの父は、息子の誕生を見ることなく弾丸で蜂の巣にされて死んだ。彼が11歳になった日に、母も銃で撃たれて死んだ。ブラジルの多くの子どもがそうであるように、ドウグラスさんもきょうだいを養うために学校を中途退学(ドロップアウト)せねばならなくなった。
サンゴンサロはリオデジャネイロ州で最も貧しく、治安の悪い街の1つだ。ここでドウグラスさんと時間を過ごしてみて、彼にとってはこの場所に生まれたのが運の尽きだったということがよくわかった。ドウグラスさんの暮らす街は、世界でもとくに不平等なブラジルの中でも、とりわけ格差がひどい。ここで生まれた人が中間層への仲間入りを果たすには、統計的にいって、あと9世代はかかる。
ドウグラスさんが例外なのではない。似たような子どもは何百万人といる。ブラジル最大のネットワーク局で番組を持つ私は、20年にわたってスラム街やアマゾン奥地に住む人々の話を紹介してきた。社会起業家としても、ブラジルに住む何千万という貧困層の力を解き放つ方法を模索している。
少なくとも私が物心ついた頃から、ブラジルは「未来を永遠に待ち続ける国」と世界からバカにされてきた。格差が国の発展を阻んでいるのだ。植民地支配や奴隷制の名残ともいえる格差は、冷淡なエリート層によって永遠の命を吹き込まれた。1985年に軍事独裁が崩壊して以降、歴代政権はインフレを和らげ、社会保障を広げ、貧困を減らしてきた。が、それでも格差は一向に縮まらない。
巻き戻される時計
それどころか、格差は再び拡大し始めており、過去30年の進歩が帳消しになるおそれが出ている。元凶は逆進的な政策だ。ブラジルの税制は弱者に厳しく、私のような金持ちにはことのほか甘い。
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