ドイツの空気が暗いのは、景気悪化だけが理由ではない。技術力と高品質の工業製品で鳴らしてきたドイツは今、国際競争から落ちこぼれるリスクにさらされている。ソフトウェアやデータが競争力を左右する時代になったからだ。米アップルの時価総額が先日、ドイツを代表する株式指数DAX30の構成銘柄の合計時価総額を上回った。ドイツの政財界が一段と悩みを深めているのは間違いない。とりわけ危険なのが機械、自動車、化学だ。中国の製造業も力をつけてきており、ドイツ企業の競争環境は厳しさを増している。
ドイツのフォルクスワーゲン(VW)などが自動運転車を開発しようにも、欧州にはそれに対応できるハイテクの有力企業が存在しない。ドイツ車メーカーといえども、米グーグルや中国企業に頼らなければならないのが現状だ。自動車はこの先、“4輪のスーパーコンピューター”に生まれ変わる。対応が後手に回れば、VWなどのドイツ車メーカーはフィンランドのノキアと同じ運命をたどってもおかしくない。一時は携帯電話市場を席巻したノキアだったが、アップルの「iPhone(アイフォーン)」が出現するや、瞬く間に凋落した。
要するに、ドイツ経済はダイムラー、バイエル、BASF、アリアンツといった国を代表する企業群が生まれた19世紀後半以来の変革を迫られている。
もっとも、政府が技術面で企業を支援していかなければ、そのような変革は望めない。その意味で、ドイツをはじめとする欧州各国は米国の国防高等研究計画局(DARPA)を見習う必要がある。
米国ではDARPAなどの政府機関が何十年にもわたってイノベーションを先導してきた。インターネット、GPSナビゲーション、液晶ディスプレー、音声認識技術なども、ここから生まれた。政府が旗振り役を務めていなければ、今をときめく米国のテック企業は存在すらしていなかっただろう。
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