権力の集中が行き過ぎると、マイナス情報の報告や処理が後手に回る。湖北省武漢市を発生源とする新型肺炎をめぐる中国政府の対応からは、そうした人類普遍の教訓が見て取れる。
武漢市政府によれば、原因不明の肺炎患者が最初に確認されたのは昨年の12月8日だった。年明けには国外での感染例が報道され始めたが、中国では湖北省以外での感染は公にされてこなかった。
中国のネット上では、湖北省の防災部門が1月20日に開いた春節祝賀会の様子が、怒りとともに拡散されている。壇上には習近平国家主席が新年のあいさつで使ったフレーズが大書され、習氏への忠誠を強くアピールしていた。
後から見ればなんとも間が悪い。この日、習氏は新型肺炎対策に本腰を入れることを宣言し、感染情報を速やかに公表するよう地方政府に促したのだ。「国外まで広がっているのに、国内で患者がほかにいないわけがない」という国民の声を無視できなくなったのだろう。独自報道もようやく解禁された。
1月23日には武漢市の封鎖が決まったが、今やチベット自治区以外の中国全土で患者が確認されている。中国の官製メディアはこぞって武漢市の情報公開の遅れを批判するが、習指導部に矛先が向くのを避けるためではないか。
追い詰められた武漢市長は1月27日に国営中央テレビのインタビューで辞職の意向を示すと同時に、「感染症に関する情報は法律上の手続きを経ないと公表できなかった」と釈明した。中央にも責任があると受けとれる言い方だ。
2002年から03年にかけてSARS(重症急性呼吸器症候群)が猛威を振るった時期には、北京市による情報隠蔽を医療専門家が告発し、現在「財新メディア」社長を務める胡舒立(こじょりつ)氏らジャーナリストが当局の責任を追及した。
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