米大統領選挙を迎える2020年の年明けから、ドナルド・トランプ大統領の再選を左右するような重大な事件が起きた。
3日、トランプ大統領はイラン革命防衛隊の精鋭「コッズ部隊」のソレイマニ司令官殺害を指令し、米軍が殺害した。報復としてイランは6日、イラクに駐留する米軍基地にミサイルを撃ち込んだ。イランによる攻撃で米軍の死者は出ず、また両国が抑制的な姿勢を示したことで軍事衝突の悪夢は遠のいた。ただし、トランプ大統領が自ら作り出したとも思われる今回の「イラン危機」は、ライバル民主党に新たな批判の種を提供した。
トランプ大統領はソレイマニ司令官殺害の理由について、「米国民の生命への直接の脅威を未然に防ぐため」と主張した。にもかかわらず、その証拠がまったく示されなかったため批判も高まった。対立する民主党に加え、ランド・ポールら共和党の上院議員2人も大統領に疑義を表明した。
米国憲法では米軍の最高指揮官の権限は大統領にある。議会は宣戦布告の権限を持ち、大統領の戦争遂行に一定の歯止めをかける役割を担う。
民主党のナンシー・ペロシ下院議長は5日、イランをめぐるトランプ大統領の軍事行動制限へ「戦争遂行権限決議案」を上程する方針を示した。共和党が過半数を占める上院で決議案は通らないため、実効性はない。だが、有権者に「大統領は米国を戦争に巻き込む危ない指導者」という印象を与えるうえでは効果があるだろう。
大統領に戦略はない?
米主要メディアでも、政治的な姿勢から大統領を擁護する意見を除けば、トランプ大統領が深い戦略なしにソレイマニ司令官殺害の指令を出したことへの批判が多い。例えばリベラルのニューヨーク・タイムズと保守のウォールストリート・ジャーナルの双方が引用したのは、共和党のブッシュ(子)政権で国務次官を務めたニコラス・バーンズ米ハーバード大教授のツイッターだ。同氏はソレイマニ司令官を殺害する正統性を容認したうえで、疑問を投げかけた。「大統領はチェスボード上で次の15手を考えたのだろうか? 米国市民をどう守るのか? 我々と一緒に同盟国をどう行動させるのか? 戦争拡大を防ぎながら、イランをどう封じ込めるのか? 私の想像では、彼はそこまで考えていない」。
この記事は有料会員限定です
残り 484文字
