米サンフランシスコにいると、セールスフォース・ドットコムの影から逃れられない。ダウンタウンにそびえる61階建ての「セールスフォース・タワー」は、市内で最も高いビルで同社が本社機能を置く。近隣にある公共交通のハブ施設は同社が命名権を得て、「セールスフォース・トランジットセンター」となっている。市内で最も先端的な病院には、同社創業者であるマーク・ベニオフ氏とその妻の寄付により、「ベニオフ小児病院」の看板が掲げられる。
シリコンバレーにテック企業は数あれど、CEO(最高経営責任者)が目立った活動をする例は他にあまりない。20年前にCRM(顧客関係管理)ソフトをクラウドで提供するビジネスを立ち上げたベニオフ氏は、現在70億㌦を保有する資産家だ。だがそれよりも、政治的、社会的立場を明らかにしないトップがほとんどのテック企業の中で、フィランソロピー(社会貢献)、NPO支援から資本主義の新しい姿にまで発言する点が特徴だ。同社の年次コンファレンスには、クリントン元大統領夫妻やオバマ前大統領など民主党関係者が登壇。ベニオフ氏は同党支持者であることを公にしている。
ベニオフ氏の主張の1つは、企業はシェアホルダー(株主)だけでなくステークホルダー(関係者)にも利益をもたらす存在になるべきというものだ。彼の言う関係者には従業員や顧客、コミュニティー、ひいては「この地球」までが含まれる。同社は「1-1-1ルール」を設けており、従業員の時間の1%をボランティア活動に、製品と株式の1%をNPOなどへの寄付や資金援助に充てるなど、企業活動をコミュニティーへ還元していることでも知られる。
さて、儲け主義が当たり前のテック業界で異論を唱えて戦う同氏だが、事はそう簡単ではない。例えば昨年11月の年次コンファレンスでの出来事だ。
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