2020年の米大統領選挙が近づく中、イランは難しい決断を迫られている。現段階でトランプ氏と交渉するのが得なのか損なのか、指導層の考えは真っ二つに割れている。
一方には、大統領選が終わるまで交渉に応じるべきではないとする見方がある。気まぐれなトランプ氏が選挙に負け、民主党に政権交代すれば、米国の出方はずっと読みやすくなる。
しかし、トランプ氏が再選を果たせば、譲歩を引き出すのは今以上に難しくなる。トランプ氏が選挙のために外交的な手柄を演出しなくてもよくなるからだ。しかも、その頃にはイラン経済はさらに悪化しているかもしれず、そうなればイランの立場はもっと弱くなる。
イラン経済の実情は見極めにくい。2018年に米国が核合意を離脱し、経済制裁を再開してから、イラン経済は累計で5〜15%のマイナス成長に落ち込んだと推計される。しかし、この数字にはかなりの幅がある。こうした状況の下、イランの政策担当者は長期の経済見通しをめぐり激しい論争に巻き込まれている。
片方にいるのが最高指導者ハメネイ師を頂点とする保守強硬派だ。強硬派は国際的に孤立しても耐えられるように経済の構造を変革すべきだと考える。
その強硬派によれば、イラン経済はすでに回復の兆しを見せている。制裁で石油輸出が急減したとはいえ、暴落していた通貨リアルも3割ほど値を戻した。少し前に公表された統計では雇用の改善も確認されている。イランの雇用は19年第3四半期(7〜9月)に前年同期比で3.3%増加し、失業率は10.5%と7年ぶりの低水準となった。増加した雇用の3割は製造業によるものだ。
制裁で強まる抵抗力
これは制裁がイラン経済の多角化を後押ししていることを示唆する。「オランダ病」といえば、天然資源の輸出が増えると製造業が衰退する現象を指す経済用語だが、イランではこれと正反対の現象が起こっている可能性がある。
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