米下院は連邦最低賃金を2025年までに段階的に時給15ドル(約1630円)へと倍増させる法案を7月に可決している。だが、上院は共和党が過半数を握っているため、法案が成立する見込みはゼロに等しい。さらに議会予算局(CBO)は、最低賃金が15ドルになれば130万人が失業するとの試算を公表している。
似たような反論は英国が16年に最低賃金を引き上げたときにも聞かれた。しかし、あれから3年が経過した今も雇用に悪影響が出た形跡は見られない。それどころか英国では最近、賃金上昇のペースが上がってきている。英シンクタンクのレゾリューション・ファウンデーションの予測では、物価変動の影響を除く1週間当たりの平均実質所得は、間もなく07年8月にピークとなった513ポンド(約7.2万円)を上回る見通しだ。
現時点では12月12日の英総選挙の目玉公約になっているわけではないが、労働党と保守党はどちらも最低賃金のさらなる引き上げを訴えている。ジョンソン政権のジャビド財務相は、24年までには最低賃金を所得中央値の3分の2に引き上げると公約。労働党もこれに負けじと、政権を奪取すれば最低賃金を時給10ポンド(約1400円)に引き上げると誓う。
当然、経済界は眉をひそめ、そんなことをすれば失業が増えるだけだと警告している。だが、最低賃金の引き上げは、ちまたで言われている以上に経済的なメリットが大きいのではなかろうか。資本主義への不信感が強まっていることを考えれば、財界は最低賃金引き上げにもっと前向きな態度で応じたほうがいいように思う。
企業の怠慢を許すな
米英などの雇用統計は極めて良好な値を示しているのに、企業の投資は依然として弱く、生産性も賃金も上がらない状況が続いている。企業業績の拡大が続き、マクロ経済環境が良好な時期には本来、投資が拡大するものだ。実際、好業績に低金利と法人減税が重なるという完璧な条件がそろっているのだから、投資は大きく盛り上がっていても不思議ではない。
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