次世代決済技術を米国が独占的に取り締まることはできない──。フェイスブックの最高経営責任者、ザッカーバーグ氏は米議会でそう証言したが、この指摘は少なくとも半分は当たっている。ただ、中国が今にも国家主導でデジタル通貨を立ち上げ、ドルの覇権が揺らぐとほのめかしたのは行き過ぎだったのではないか。
「皆さんはフェイスブックが計画するデジタル通貨リブラがお嫌いかもしれない。それでも中国に覇権を握られるよりましでは?」同氏はそう言いたかったのだろうが、中国がデジタル通貨を発行するようになっても、ドル支配は簡単には崩れない。
ともかく、合法的な表の経済ではそうなる。ドル決済の大半は適法に行われ、当局の監視も行き届いている。事実、米国の規制は強力で、ドルを扱う金融機関なら拠点が海外であっても米国の規制に縛られる。ドル市場が圧倒的な規模と流動性を誇っているのは、こうした「法の支配」に支えられているからにほかならない。
対する中国の金融システムは不透明で、人民元がドルから基軸通貨の地位を奪い取ろうとしても、まだ何十年とかかるに違いない。
だが、違法な地下経済となると話は違ってくる。主に脱税、犯罪、テロ目的で成り立つ世界の地下経済は、確かに表の経済に比べれば規模は小さい(5分の1程度だろうか)。しかし、それでも極めて重大な影響を及ぼしうるのだ。
米国が管理するデジタル通貨であれば、原則として米当局が資金の動きを追跡できるような設計が義務づけられることになろう。北朝鮮がロシアの科学者を雇って核開発を進めるとか、イランがテロ資金を拠出した場合に高い確率で足がつくようにするためだ。
ところが、中国発のデジタル通貨が世界で流通するようになれば、米国の監視能力は一気に低下する。西側諸国が中国デジタル通貨の使用を禁じたとしても、アフリカ、中南米、アジアで利用が広がるのを止めることはできない。このようにして流動性が高まれば、欧米でも犯罪目的で利用しようとする動きが強まるだろう。
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