首都ワシントンでは秋が深まり、気温も下がってきた。だが政界の空気はすでに氷のような冷たさだ。米下院でトランプ大統領の弾劾調査が正式に開始されたからである。弾劾は今に始まった問題ではないが、今回は重みが違う。与野党は対決姿勢を強め、トランプ派と反トランプ派の対立も深まる一方だ。このままだと米国の外交にも影響を及ぼし、日本をはじめとした同盟国は難しい選択を迫られるおそれがある。
民主党のペロシ下院議長が弾劾調査の開始を宣言したのは9月24日。トランプ氏が大統領選挙の民主党有力候補、バイデン元副大統領の不正を探るようウクライナの大統領に働きかけていたことが発覚したためだ。外国に選挙協力を頼めば米国では違法となる。ただ下院には大統領を弾劾訴追する権限があるとはいえ、最終的に有罪か無罪かを決めるのは上院だ。
「政権転覆を狙う破廉恥な企て」。トランプ氏は弾劾調査をそう切り捨てた。だが疑惑が次々に浮上する中、世論調査で弾劾調査を支持する声は5割を超えた。民主党が過半数を握る下院では年内に弾劾が可決されそうだ。ただ、弾劾は共和党が支配する上院で否決されることになるだろう。
されど混乱するトランプ政権の状況は、日本にとって無風とはいかない。理由は3つある。
第1にトランプ政権ではスタッフの離反が始まっている。ウクライナ疑惑をめぐっては、ポンペオ国務長官の上級顧問など少なくとも2人の高官が辞任した。さらに問題なのは、優秀な人材がこの政権に仕えたがらなくなっていることだ。同政権の離職率は歴史的水準に達し、残っているのは以前にも増してトランプ氏を信奉する者か茶坊主ばかりとなってきた。
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