9月14日号の本欄で米国保守主義の変容を論じ、米ノートルダム大学教授パトリック・デニーンの著書『なぜ自由主義は失敗したか』(邦訳未刊)が新たな潮流を示す本の1つであること、米国建国以来の個人主義的自由主義が否定され始めたことを紹介した。
仮にこの流れが定着すると、米国はこれまでとはかなり違う国家になっていく。この本が反響を呼んだ背景をさらに考えてみたい。そこには、新たな宗教右派運動とでも呼ぶべき動きがのぞく。
これまで宗教右派といえば、プロテスタントの福音派(エバンジェリカル)が政治化した動きを指した。これに対し、デニーンの自由主義批判の背景となっているのは、米カトリック教会内での知識人闘争だ。これまで小さな勢力だったグループが、新たな政治・経済・社会状況、すなわちトランプ現象の中で影響力を広げている。
カトリック知識人の間でも、以前からリベラル(左派)と保守(右派)の闘争があった。プロテスタント内と同様である。ただ、デニーンの自由主義批判登場の背景となったのは左右でなく、保守派内の闘争である。
米国はプロテスタント国家として出発したが、アイルランド、ポーランド、イタリアなどカトリック国からの移民が増え、1960年代には初のカトリック大統領ケネディが登場した。現在では中南米移民の増加もあり、カトリック人口は約7000万人、4人に1人に近い(民主党大統領候補最有力のバイデン前副大統領もペロシ下院議長もカトリックだ)。
米国に同化していく中で、プロテスタンティズムに根差す米国の自由主義・民主主義・資本主義を強く支持する保守系カトリック知識人らが、冷戦期の米政治に影響力を持った。『民主的資本主義の精神』(1982年、邦訳未刊)の著者マイケル・ノバックを代表例に、ネオコン(新保守主義)知識人らと連携し、レーガン政権を支えるなどした。現在でもこの保守系カトリック知識人の系譜は続いている。
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