米国の格差対策が、新しい局面を迎えている。膨大なデータを使った研究により、親の貧困を子どもの世代へ受け継がせない方法が明らかになり、政策でも効果を上げつつある。
米国では格差の固定化が問題視されてきた。先進国の中でも、貧しい家庭に生まれた子は成人しても貧しいままであり、裕福な家庭の子は高い年収を得るようになりやすい国だからである。
格差の固定化に立ち向かう手がかりとして注目されているのが、ワシントン州のシアトル市周辺で進められているプロジェクトだ。2018年に始まった同プロジェクトは、貧しい家庭を対象に子が成功する可能性の高い地域への転居を支援している。転居に成功した家庭の子は、転居しなかった場合と比較して、20万ドル以上も高い生涯年収を得られる可能性があるという。
取り組みの背景にあるのが、米ハーバード大学経済学部のラジ・チェティ教授が中心となって進めてきた研究だ。同教授らは約2000万人分の納税データなどを使い、育った地域と年収の関係を分析してきた。その結果、同程度の所得の家庭に生まれても、成功する可能性の高い地域に転居した子は、転居しなかった子より高い年収を得る傾向が明らかとなった。同じような所得の家庭に生まれた子でも、幼少期に育った地域によって成人後の年収に大きな差が生じていることがわかっている。
研究は幼少期に過ごした地域の環境こそが、貧困を抜け出せるかどうかを左右する現実を示唆している。生涯年収が高まる度合いは転居時の年齢が低いほど大きく、育った環境による影響が蓄積されていく様子がうかがえる。
チェティ教授らがまとめたデータを使えば、子が成功する可能性の高い地域かどうかを、市町村単位よりも細かいレベルで把握できる。インターネット上に公開された地図を見ると、ほんの数キロメートル離れた地域で育った子でも、成人後の年収には大きな違いがあることがわかる。
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