バッハ(1685〜1750)のリューベックへの旅の逸話は印象的だ。ドイツ・アルンシュタットの教会オルガニストだった20歳のバッハは、1705年秋、4週間の休暇を取ってリューベックの聖マリア教会オルガニスト、ブクステフーデ(1637?〜1707)を訪ねる。
勝手に休暇を延長して3カ月も滞在し、勤務先の教会からはひどく叱られたそうだが、そこで体験したブクステフーデの音楽やオルガン演奏は、その後のバッハに大きな影響を与えた。いつの時代も自己啓発は重要らしい。今回はそのバッハを魅了した“楽器の王様”パイプオルガンに迫ってみよう。
その歴史は古く、紀元前3世紀ごろのエジプトで水位差を利用して風を送り、パイプから音を出す楽器が発明されたという記述が残されている。現在のような楽器の形が確立したのは15世紀で、コンサートホールに設置されるようになったのは19世紀以降のことだ。
大きさは設置場所の広さや使用目的によって千差万別。1台1台が特注品のため、同じ曲を演奏しても個々の楽器によって印象がまったく違うのも魅力の1つだ。世界最大級を誇るサントリーホールのパイプオルガン(オーストリア・リーガー社製)には、指先ほどのものから子どもが中に入れるほど大きなものまで、大小5898本ものパイプが備えられ、4段の手鍵盤と足鍵盤によって、オーケストラのようなダイナミックな音から鳥のさえずりのような繊細な音色までを縦横無尽に響かせる。
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