毎年2月に行われるミュンヘン安全保障会議は、ビジネス界ならさしずめ世界経済フォーラム(ダボス会議)に相当する。この会議は冷戦期に米独の軍事的結束を世界に示す目的で立ち上げられたものだが、今では気候変動を含む外交上のさまざまな問題を話し合う場になっている。
今年の会議は出席者の数もさることながら、その内容が今後、語り草となるだろう。米国のペンス副大統領とドイツのメルケル首相が行った演説は何から何まで真っ二つに割れた。米独の同盟関係をうたい上げる場で双方がここまで対立するとは、よほどのことだ。
ペンス氏の演説は強硬な米国第一主義に彩られたもので、国際ルールを頑として受け入れないトランプ政権のやり方を自画自賛した。欧州は米国に従うしかない、とペンス氏はぶち上げ、欧州も米国に倣ってイラン核合意を破棄すべきだと迫った。拍手を狙った決めぜりふはことごとく滑り、昨年の会議同様、質疑応答も拒絶した。
反対にメルケル氏の演説は、同氏の政治家人生の中でも一、二を争う出来だった。メルケル氏は力強く、そして堂々と、気候変動やロシアの脅威といった難題に国際社会が団結して立ち向かうべきだと訴えた。身勝手な米国第一主義を手厳しく批判したのである。
聴衆は立ち上がって喝采した。ミュンヘン会議では、まず見かけない光景である。メルケル氏は質問を受け付けた。自信とユーモアにあふれる受け答えに、会場はまたもや拍手の渦に包まれた。
ルビコンを渡った?
ペンス、メルケル両氏の演説は、米欧の衝突を予告した不吉な出来事として後世に記憶されることになろう。ちょうど、ロシアのプーチン大統領が2007年に行った挑戦的な演説のように。
同年のミュンヘン会議で、プーチン氏は欧ロ関係の悪化を告げた。程なくしてロシアはジョージアに侵攻。その後、クリミアを併合し、ウクライナ東部を侵略、西側民主主義国にサイバー攻撃を仕掛け、西側各国との対立を深めていく。
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