リーマンショックから10年。金融システムは当時とは比べものにならないほど安全になったと政策担当者は胸を張る。なるほど、メルトダウンを引き起こした大手銀行はハイリスクな取引を縮小させているし、金融当局による監視も強まった。だが、金融システムの安全性は本当にそこまで高まったといえるのだろうか。
状況が普通なら、「そのとおり」と答えたいところだ。しかし残念ながら、今は普通と呼べるような状況ではない。
世界の主要中央銀行がおおむね優秀な人材によって運営されているのは幸運というべきだろう。だが、金融の安定は中央銀行だけで完結する仕事ではない。これは政府全体の仕事なのだ。では、その政府の能力はどうかといえば、疑問だらけといわざるをえない。
次に起こる金融危機がリーマンショックと似たようなものなら、2008年に編み出した政策を引っ張り出してくることもできる。だが次の金融危機が、例えばサイバーテロや世界的な金利急騰など、かつて経験したことのないものになったとしたらどうか。
トランプ政権にそのような未曽有の危機に対処する能力が備わっていると心から言い切れる人など、ほとんどいないのではないだろうか。何しろトランプ政権になってから米国が直面するようになった危機の発生源は、トランプ大統領その人なのだから。
確かに米連邦準備制度(FED)は一流の人材に恵まれている。しかしFEDといえども、金融危機に単独で立ち向かうことはできない。当然、政府から政治的、財政的な支援を取り付ける必要がある。
しかも2010年に成立した金融規制改革法によって金融機関の救済に厳しい制約がかけられ、FEDが自由に動ける余地は狭まっている。米議会は上院と下院で多数派が異なるねじれ現象に陥っており、こうした状況で危機に対処できるのかという問題もある。
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