しばしば、将来の人手不足が人数で示される。「2025年には介護人材が38万人不足する」「労働市場全体の人手不足数は30年には644万人になる」といった類いの議論である。こうした人数をベースとしたアプローチに対しては、強い違和感を持っている。それは無意味であるばかりか、有害でさえあるからだ。
なぜ無意味なのか。こうした人手不足の推計では、産業構造の変化を一定程度想定し、各分野の生産量に応じて必要となる労働量数をはじき出す(需要の推計)。次に、年齢別の労働力率などから労働力者数を出し、その分野別配分を推計する(供給の推計)。この需要と供給の差が不足人数となる。このとき、賃金や生産性、企業の参入や撤退、各分野の公的規制といった変数はほぼ固定されている。
しかし、こうした需給差が将来にわたって続くことはありえない。事前には需給ギャップが続くと見込まれても、結果的には何らかの調整が働いて需給はほぼ一致する。女性・高齢者・外国人の働き手が増えるかもしれない。賃金が上がると「そんな高い賃金では雇えない」と雇用を諦める企業も出るだろう。ロボットなどの技術進歩が、労働者1人当たりの生産性を向上させることも考えられる。
人手不足数の推計は、こうした調整が作用しないと仮定している。だから将来においても人手不足が人数として残り続けるのである。
次に、有害だと考える理由を説明しよう。筆者が懸念するのは、人数ベースの将来展望を続けていると、人手不足への対応も人数ベースになるということだ。
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