うだるような猛暑が収まりかけた夕暮れ、川沿いにその店はたたずんでいた。徳島唯一の村、佐那河内村の山あいにある「虎屋 壺中庵(とらや こちゅうあん)」である。
2018年7月、この日の朝はウラジオストクにいた。そこから成田経由で高松に飛び、レンタカーで走ることさらに2時間、ようやくこの徳島の山村に辿(たど)り着いた。
もともと、奈良のレストランに行く予定だった。だが、夏場は成田─関西間も航空券が高い。航空券検索サイトを見て、この日の成田発高松行きのジェットスター・ジャパンが6000円台と安いことに気がついた。「それなら高松に行けばいい」と行き先を変更した。
限られた時間で効率よく回るためレンタカーを借りることにした。車なら、「虎屋 壺中庵」まで足を延ばせる。
知る人ぞ知る存在だった同店がその名を知られるようになったのは、レストランの口コミサイト「食べログ」で高得点を獲得したため。16年には全国約80万軒のなかで8位となった。東京や京都のミシュラン三つ星店などと並び、この山奥の店がその名を連ねたことは特筆に価する。
16年には日本航空の国内線ファーストクラスの機内食のプロデュースも行っている。
高松空港に着いたのは15時過ぎ。「虎屋 壺中庵」の予約時間まではまだ4時間ほどある。
そこで、女性シェフのナポリピザの店、「ピッツェリア アル チェントロ」に立ち寄ることにした。
全国放送のテレビで紹介されたばかりだからだろうか。食事には中途半端な16時にもかかわらずほぼ満席。次々と予約の電話がかかってくる。
この記事は有料会員限定です
残り 563文字
