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しばらく前になる。本誌1月20日号が、高島正憲『経済成長の日本史』(名古屋大学出版会)の紹介批評を掲載した。筆者もやや畑違いながら、熟読玩味した歴史書である。
GDPの長期推計というのは、経済史の学界で近年、流行りの分析手法である。本書はいわば日本史の文脈で、それをつきつめた研究成果にほかならない。わが国の長期的な経済動向が、ごく一般的な経済指標のGDPでわかりやすく追跡できるところから、注目を集めている。何しろ奈良時代から19世紀・近代まで、千年あまりが一望できるとあっては、話題になるのも無理はない。
本誌の書評も、「印象的なのは、わが国は大きな負の経済変動を経験しなかったという推計結果だ」と、本書の日本経済史像を高く評価した。たしかに日本人の過去に対するイメージを一変させる可能性をもっており、筆者も大いに勉強になった。
「国際比較」の真偽
一読しての感想は、「うらやましい」の一言につきる。日本史とりわけ社会経済史の研究成果に対し、往々にして抱く羨望で、本書に限ったものではない。筆者自身が従事する東アジアの経済史の分野では、想像もつかないほど具体的で精細な資料が豊富だからである。同じ水準の仕事は、とても及ぶところではない。
だからといって、手放しで称賛するつもりもない。感心羨望するのは、日本に関わる部分のみである。本書の最終目標は、経済成長の「国際比較」にあって、実際それを試みた章もある。ここまで読みすすめると俄然、首を捻(ひね)らざるをえなくなった。
「国際比較」といっても、ヨーロッパだけならよい。資料・サンプルも同じレベルだし、分析方法も共通するから、比較にも説得力がある。推計・数値の算出・対比も、西洋諸国を計るための方法であって、日本列島の歴史はおおむね、それに適合しているらしい。しかしそれは古今東西、いつでもどこでも、あてはまることだろうか。
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