海上自衛隊の幹部候補生学校の正門は陸上にはない。隣接する海にある。陸上の施設であっても艦艇での生活を基盤としているため、正門は「桟橋」、掃除は「甲板掃除」、外出は「上陸」と呼ぶ。だから、他国の軍隊などが表敬訪問する場合も桟橋へ船舶でやってくる。幹部候補生は、入学時は陸上の裏門から入ってくるが、晴れて卒業となれば正門から出ていくことが許可される。
幹部になって間もない24歳の私は、沖合のいかりを降ろした艦艇からその正門を見ていた。穏やかな春の日差しの中を、音楽隊を先頭に「軍艦行進曲」に歩調を合わせて卒業生が一列で桟橋へ向かってくる。桟橋には、卒業生を艦艇に送り届けるためのランチ(小艇)が待機していた。
私の乗り組んでいた艦艇は、今からその卒業生を乗せて、遠洋練習航海に出る。私は、彼らの生活態度の成績をつけるために、すべての実習はむろんのこと、早朝から深夜まで彼らと行動を共にした。しばらくすると、彼らが四つのタイプに分かれることがわかってきた。
1 与えられた課題を全力でこなそうとする。態度も素直で、成績も上位。典型的な優等生タイプ。
2 どんな課題でも腐ることなく努力する。しかし、全力ではなく、最小の努力で最大の評価を狙っている。私とやたら目が合う。評価者の目を気にする計算高いタイプ。
3 最低限しなければならないことだけをさっさと終わらせて、あとは自分のための時間に充てている。無駄な時間を使いたくないタイプ。
4 態度が悪い、生意気、反抗的で成績も下で典型的な劣等生タイプ。
帰国直前の成績判定会議で私は、1→2→3→4の順で成績をつけた。誰からも反論はなかった。
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