「オールクリア!」
高速で移動しながらチームによる射撃訓練をしていた特殊部隊員たちがそれぞれの場所で一斉に叫んだ。
射撃場内にランダムに設置されたターゲットすべてに対し、規定弾数を撃ち込んだという意味である。この大呼とともに、射撃場内の各部から入り乱れて響いていた射撃音がやみ、その場は静寂に包まれていた。聞こえているのは、彼らの激しい息遣いだけだった。
射撃場を見下ろす位置から監視していた私は、彼らの緊張の糸が切れないように、強い口調で命じた。
「安全装置かけ!」
射撃を終えた直後は、急に気が抜けやすく、銃に安全装置をかけ終わるまでがいちばん危険だからだ。
「安全装置よし!」
私は、全員の銃に安全装置がかかっていることを自分の目で確認し「状況中止!」と宣言した。
これは自衛隊用語でシナリオ訓練の終了を示す。陸上・航空自衛隊では「状況終わり」だが、どういうわけか海上自衛隊だけが「状況中止」と言う。
「2番! 区画内に入ったとき、脅威をどう評価したんだ?」
2番は、区画に入った順番である。
「右奥の隅にターゲットがあったので発砲し、次の瞬間に遮蔽(しゃへい)物の陰に……」
「そんなこと聞いてねぇよ。区画内全体の脅威をどう評価したのかを聞いてんだ」
「……全体は見てません」
「チームは一つの身体だ。だから全員の脳が同じことを考えてなきゃチームは一つの身体にはならないんだ。それには全員が同じ情報を持ってないと、同じことを思いつかない。次は、全体の脅威を掌握するまで撃つな。どうでもいいことにこだわるから、全体が見えないんだ。どこにも焦点を合わすな。そうすりゃ一瞬で全体が見える」
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