有料会員登録 東洋経済オンラインとは
政治・経済・投資 #経済を見る眼

28兆円の超大型経済対策に欠けている視点 量が優先され、質(効果)の議論が置き去りに

3分で読める 有料会員限定
  • 佐藤 主光 一橋大学大学院経済学研究科教授
[今週の眼]佐藤主光 一橋大学教授
さとう・もとひろ●1992年一橋大学経済学部卒業、98年加クィーンズ大学博士号(経済学)取得。2009年から現職。専門は財政学。政府税制調査会委員なども務める。著書に『地方税改革の経済学』『地方財政論入門』、共著に『震災復興 地震災害に強い社会・経済の構築』など。(撮影:梅谷秀司)

「世界経済の需要の低迷、成長の減速のリスクが懸念される」中、政府はデフレからの脱却に向けて事業費約28兆円(財政措置約3.5兆円)の超大型経済対策を決めた。働き方・労働市場改革も推進することで「当面の需要喚起にとどまらず、(中略)持続的な経済成長」の実現につなげるとするが、10兆円規模の公共事業をはじめ、当面の景気対策の性格が色濃く出ている。

実際、インフラ整備=未来への投資というならば、生産性向上といった効果を勘案して事業は精査されるべきだが、量(事業規模)が優先されて、質(効果)の検証が伴っていない。拡大志向のインフラ整備は人口減少社会において求められてきた公共施設などの縮減やコンパクトシティ化とも相いれない。中小企業などへの支援(事業規模10.9兆円)も「目指すは世界」という志・能力に欠ける企業への支援であれば、産業の新陳代謝を阻害しかねない。

経済学では景気は短期的、成長は中長期的な経済のパフォーマンスを指す。ヒトの体に例えると、景気は体調、成長は体力に当たる。本来、体調を回復するのが財政出動ならば、体力を増強するのが構造改革になる。大規模な財政出動を行い、かつ東京オリンピックによる特需を期待するならば、当面、景気は下支えされるだろう。今回の経済対策では需要面で見ておおむね1.3%の実質GDP拡大効果が見込まれている。しかし、構造改革なしでは成長が持続する見込みはない。

もっとも、アベノミクスはこれと異なる経済観を内包してきた。ここで経済は「よい均衡」と「悪い均衡」に区別される。よい均衡では成長が高く、企業や家計は将来に対して楽観的な見通しを持つ。楽観的だから投資や消費も高水準で高い成長を支える原動力になる。高成長が続けば楽観的な期待も持続する。

こちらの記事もおすすめ

あなたにおすすめ

政治・経済・投資

人気記事 HOT

※過去1ヶ月以内に配信した記事の閲覧数