偶然だとは思うが、政府が経済対策を閣議決定した、その8月2日に国際通貨基金(IMF)はアベノミクスへの批判的見解を含んだ対日審査報告を公表した。筆者はIMFの提言すべてに賛成というわけではないが、今回の報告内容には尊重すべき点が少なくないので、以下に紹介してみたい。
第一に、この報告は日本の労働市場を「他国が羨(うらや)むほど」と称賛しつつ、アベノミクスの三つの目標、すなわち2%のインフレ、2%の実質成長率、2020年度までのプライマリーバランス黒字化について、現在の政策ではいずれも「達成できない」と断言している。主要国の経済政策への評価としては、異例の厳しさである。
第二に、金融政策と財政政策の余地は小さくなっていると指摘している。日本銀行の黒田東彦総裁は「金融緩和手段に限界はない」と言うが、市場参加者の多くは年間80兆円もの国債買い入れには早晩限界が来ると見ている。巨額の財政赤字を抱える日本に財政出動の余地が乏しいのは常識である。財政投融資などで数字を膨らませた結果とはいえ、事業規模28兆円もの経済対策のほうが非常識だろう。IMFはむしろ「消費増税を含む信頼できる財政健全化計画にコミットすべし」と求めている。
第三に、成長戦略、構造改革では大胆な労働市場改革が重要だとし、雇用の二重構造緩和や、女性、高齢者、外国人専門家の活用を訴えている。これは、政府も一億総活躍の推進で取り上げているテーマだが、踏み込み不足は否めない。IMFはこうした分野で「もっとエンジンを吹かせ」と言いたいのだろう。
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