日本企業の関心が成長戦略に向かうのは、よくわかる。しかしながら、本当に立ち向かうべきは成熟戦略のほうではないのか、という論点を以下で提示してみたい。
人口の推移から見て、国内の基幹事業に成長を期待するのは難しい。そこに利益の過半を依存する企業は新たな成長点を仕込もうと奔走するが、成長戦略が実を結ぶまでには優に10年はかかる。その10年の間の業績をどうするのか、成長戦略に投じる資金をどこから調達するのか。答えは成熟事業のキャッシュ貢献しかなかろう。
成熟事業の貢献度を引き上げるには、単純なリストラでは話にならない。身を削るようにコストを削減しても、その効果は価格の下落が帳消しにしてしまうため、事業が成熟化すると、最もコストの低い首位企業以外は利益を出しにくくなる。首位を取れる見込みのない企業はニッチ市場に名誉ある退却を図り、そこで首位固めをすべきである。そういうニッチ市場が見当たらない場合は、売値がつくうちに事業売却を考えたほうがよい。
このあたりは頭でわかっても心がついていきにくいところで、それゆえ成熟戦略は成長戦略より難度が高くなる。成長期には、市場に参加しているだけで事業は伸びる。特徴ある製品を出したり、顧客密着で優位に立ったりすれば、局所的な勝利の美酒も味わえる。ところが事業が成熟化すると、競争の焦点は価格一本に収斂し、かつて主戦力と位置づけられた営業部隊や技術開発陣はお荷物に転じてしまう。成長と成熟は漢字1字の違いにすぎないが、その間には経営の百八十度反転という苛酷な試練が待ち受けているのである。
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