経歴詐称のニュースがテレビのワイドショーを騒がせている。米国の有名大学のMBA取得が虚偽であったことなどが問題視された。政治家を含め、過去にも何度か著名人の学歴詐称が問題となった。このような事件が起こるたびに、「学歴社会」に対する日本人の関心の強さが背景にあるのではないか、といった指摘がなされる。ただし、学歴が詐称される場合、そのほとんどが海外の有名大学の、しかも学士レベルではなく大学院の学位が対象となる。このような傾向に目を向けると、日本の学歴社会と企業の特徴が浮かび上がる。
学歴の価値をめぐる議論において、社会学者は学歴をタテ学歴とヨコ学歴の二つに分けて考える。タテ学歴とは、文字どおり、異なる学校段階の学歴(中卒、高卒、学部卒、修士号、博士号)に着目した場合を指す。対してヨコ学歴は、同じ学校段階の中で、たとえば学部卒であれば、どの大学卒業かに注目した場合である。
このように分けてみると、大卒以上であれば、日本は圧倒的にヨコ学歴を重視する社会である。特に企業社会では、理工系を別にすれば、文系の修士以上の学歴はほとんど付加価値を与えられない。修士や博士よりも、学部新卒が新入社員として優先的に採用の対象となる。その際、どの大学を卒業したかというヨコ学歴が、結果的に影響力を持つことは否定できないのである。
修士だからといって海外のように処遇にプレミアムがつくわけではない。さらにいえば、会社を一度辞め、日本の大学院で学び直して得られた一段高いタテ学歴は、中途採用の場合でも優遇の対象にはなりにくい。日本国内で取得されたMBAに給与面でのプレミアムがほとんどつかないことを示した研究があるが、それもこれも、新卒一括採用と、若手社員へのOJT(オン・ザ・ジョブ・トレーニング)を重視してきた日本企業の人材活用のあり方を反映している。それと引き換えに、大学院での学び直し=より高いタテ学歴取得による人的資本の自己増強と、それを生かした転職によるジョブマッチングといったセカンドチャンスの幅は狭められる。
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