日本銀行の異次元緩和は、もともと短期決戦を狙ったものだった。実際、市場の事前予想をはるかに上回る金額の国債購入と、2年に時限を区切った物価目標の導入による奇襲攻撃は、初期の段階で大戦果を収めた。大幅な円安と株高が実現しただけでなく、消費者物価の前年比も2013年の半ばにはプラスに転じ、14年春には一時プラス1.5%と、2%目標達成の一歩手前にまで迫ったのだ。
しかし、戦線はその後膠着状態に陥ってしまった。それは、円安が期待していたようには経済成長に結び付かなかったからである。円安にもかかわらず、企業の海外生産の流れは変わらず、輸出はほとんど増えなかった。また、円安に原油安という神風まで加わって、企業収益は過去最高を大きく更新したのだが、賃上げはごくわずかにとどまり、設備投資の増加も限定的だった。
一方、消費者物価(除く生鮮食品)の前年比は足元マイナス0.1%と小幅ながらマイナスとなっている。もっとも、これは原油価格の急落の影響によるもので、エネルギーを除けば前年比プラス1%強だから、日銀が「物価の基調はしっかりしている」と言うのも、強がりばかりではない。それでも、物価上昇が遅れているのは否定できず、10月末の金融政策決定会合で、2%インフレの達成時期は16年度後半へと先送りされた。16年度の終わりなら、異次元緩和のスタートから約4年、当初2年の約束が2倍に延びたことになる。
筆者はこれまで、「日銀の予想より遅れるにしても、2%の物価目標は早晩達成される。そのときには長期金利が大幅に上昇するので、それまでに財政再建のメドをつけておくことが重要」と、異次元緩和からの出口のリスクに警鐘を鳴らしてきた。完全雇用の下で賃金上昇率が徐々に高まり(定昇部分を除いたベースアップは14年0.4%、15年は0.6%程度だった)、それが物価に反映されていくと考えていたからだ。
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