今年度の経済財政白書が公表された。四半世紀ぶりの良好な経済状況と好循環の実現を強調しているが、その直後、4~6月期のマイナス成長が明らかとなったのは強烈な皮肉であった。
白書で内閣府が描いたのは、おおむね次のようなストーリーだ。1.大胆かつ大幅な金融緩和で円安・株高が進んだ。2.その下で企業業績は好調であり、景気も消費増税を乗り越えて拡大した。3.その結果、労働需給は引き締まり、物価もデフレから脱却しつつある。特に、「四半世紀ぶりの成果」が誇示されるのは、主として失業率が3%台前半まで下がり、完全雇用が達成されたことを念頭に置いたものだろう。
確かに、この指摘の多くは首肯できるものだ。8月からの中国ショックでかなりの水準訂正となったが、以前に比べればまだ十分に円安・株高だといえる。上場企業では最高益更新が相次いでいる。消費者物価上昇率は見掛けゼロ%だが、原油安によるエネルギー価格値下がりを除けば、着実に1%へ近づいている。
だが大きな問題は、好循環の要となるはずの経済成長が起きていない点にある。実際、安倍政権下(2012年第4四半期~15年第2四半期)の実質GDP成長率は年率プラス0.9%となり、民主党政権期(09年第3四半期~12年第4四半期)の同プラス1.7%の半分しかない。消費増税の影響を考慮しても、誇るべき成果とは到底いえまい。一時期2%近くと予想されていた今年度の成長率は今や1%強との見方が一般的であり、7月の指標を見るかぎり7~9月の明確なリバウンドも期待しにくくなっている。
それでは、経済成長なしに完全雇用が達成されたのはなぜか。一つは、筆者らが以前から指摘している高齢化による労働供給の減少だ。ただ足元は、人手不足に伴うプル要因で女性や高齢者の労働参加率が高まっているため、就業者数は何とか増えている。もう一つは労働生産性の低下だ。昨年の消費増税後や4~6月期のようなマイナス成長時にも労働需給が緩む様子はなく、7月の有効求人倍率は1.2倍台に達した。GDPがやや過少推計されている疑いもあるが、短時間労働者の増加もあって生産性が上がっていないのは確かである。結局、完全雇用の実現は労働供給の減少と労働生産性の低下という日本経済にとっての二つの不幸が重なった結果であり、「成果」として自慢できるものではない。
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