福島第一原発事故に伴う損害賠償は、東京電力が一義的な責任を負うというのが一般的な理解だと思われる。事故直後、大津波は「異常に巨大な天災地変」と見なされず、原子力損害賠償法第3条のただし書きによる損害賠償負担の免責はなかったからである。
原子力損害賠償支援機構(原賠機構)は、2013年末に東電に対する資金支援を5兆円から9兆円に引き上げた。9兆円の内訳は、損害賠償が5兆円強、除染費用が2.5兆円、除染作業で生じる放射性廃棄物の中間貯蔵施設建設が1.1兆円である。
原賠機構を基軸とするスキームは、原賠機構が資金を借り入れて、東電に資金を貸し付けていると考えられがちである。しかし原賠機構は、東電に対する1兆円の出資に必要な資金以外は借り入れをしていない。
実は、損害賠償の原資は政府のエネルギー対策特別会計(エネルギー特会)が借り入れた資金で賄われている。15年度予算案によると、エネルギー特会で8.6兆円もの資金借り入れが行われる。この資金が原賠機構を経由して東電に交付される時には特別利益として計上され、特別損失として計上される損害賠償支払いでほぼ相殺される算段である。
すなわち、エネルギー特会からの損害賠償資金は東電を素通りし、損害賠償に係る債務は東電の財務諸表にまったく表れないのである。
ここからが本題なのだが、先述の建前と大きく異なり、東電だけがエネルギー特会に対する債務を返済しているわけではない。主たる返済者は全国の電力利用者である。東電を含む電力会社は、一般負担金の形で毎年、原賠機構を通じて返済を行っている。この一般負担金は、電力料金に丸ごと上乗せされている。東電が収益から負担しているのは、特別負担金だけである。
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