「下流老人」という言葉が流行している。
6月に藤田孝典氏の『下流老人』(朝日新書)が発売されたのを皮切りに、同月末に新幹線内で焼身自殺をした高齢男性の事件などもあって、週刊誌を中心に「あなたも下流老人に?!」といったトーンの記事が目立つようになった。くしくも、この原稿の執筆中に「下流老人:貧困、病気、孤立…老後転落に備えよ」という特集が組まれた本誌最新号が届いた。
貧困の高齢者は、増えているのであろうか?
長期的に見ると、高齢者の貧困率は明らかに減少している。1985年に20.8%であった65歳以上の高齢男性の貧困率は2012年には15.1%に減少した。同期間に、20~64歳の勤労世代男性の貧困率が9.6%から13.6%に上昇していることを見ると、高齢男性の貧困率の減少は劇的ともいえる。
一方、高齢女性の貧困率は男性ほど改善しておらず、24.4%から22.1%に減少したのみである。しかし、決して増えてはいない。最も貧困率が高い一人暮らしの高齢者を見ても、85年から13年にかけて、男性は54.5%から29.3%、女性は70.1%から44.6%に減少している。
もちろん、これらの数値は決して低くはなく、リスクとしてはリアル感のある数値である。しかしながら、高齢期の貧困のリスクは以前から存在するものであり、貧困を研究している筆者のような身からすれば、「何を今更」という感が否めない。
ならば、なぜ「下流老人」といった言葉が今になって多くの人々を不安にさせているのであろうか。
この記事は有料会員限定です
残り 792文字
